2015年8月27日木曜日

暗闇の速さはどのくらい、の超遅れ気味の感想

実際には出版時に読んで、何だか書いた気がする。
今日、突然、何がショックだったのか、わかった気がしたので、メモしておく。
わかってた人には自明なのだが。
視点も語り口も、読者を支援者の立場にするものなんだな、あの記述は。作者のバックグラウンド(自閉症児の親、セラピスト?だっけ)を考えて、自然にそうなったと思ってたけど、あれは十分な計算の元に、あのクライマックスのためのものだったと改めて分かった。
あの本は、そもそも、ほぼ、理想的な支援体制の下での(イジメはあるし、だんだん閉塞するのだが、現実に比較して)恵まれた自閉症者の日常を描いた前半と、そのすべて、淡い恋心も含めて友人も職場もキャリアも、全部を投げ捨てる主人公という対比が、読者に裏切られた感をもたらしたのだった。だが、あの世界、自閉症者が自閉症者である事に甘んじる世界を、勇敢な主人公は投げ捨てて、振り返りもせずに先に進むのだ。
つまり、現実での自分たちに、突きつけられた刃になる疑問を残すのだ。
彼が、自閉症者である事を含めて彼であるというのと、自閉症者である事とを、分けらるのか、物理的に分けられた場合、それは彼なのか。自分はどうなのか。
まだまだ、思索は続く。

2015年8月10日月曜日